2007年4月15日日曜日

魅力ある男(3)

○丸山公園・花壇(夕)
   花壇の花をいじっている背広姿の真田。
   安永が近づいて来る。
安永「いつもすみませんねえ」
   微笑む真田。
安永「あのね、真田さん、夜だけどね。あそこの公園の事務所、使っていいから」
真田「(驚いて)え?」
安永「あそこ、区のだから。許可だしとくから」
真田「僕は…」
安田「いいんだよ。何も言わなくていいんだ」
   真田の肩に手を置いて立ち去る安永。
   離れたところからそれを見ている舞子。

○公民館・中(夕)
   安永が舞子に“花壇の世話”とある表紙のノートを見せている。
安永「だから、本当に僕は知らないんですよ。ほらね、ここにも住所は書いてないでしょ?会社名も書いてないでしょ」
   安永、がっかりしている舞子を見て、
安永「彼はね、住所のない人ですよ、きっと」
舞子「住所のない人?」
安永「まあ、一言でいえば、ホームレスマン」
舞子「(驚いて)ホームレスマン?サラリーマンじゃないの?」
安永「何か世間の役に立ちたかったんでしょうねえ。花壇の世話申し出てくれましてね」
   舞子、呆然としている。

○広場
   炊き出しが行われている。
   うろうろして列に加われない真田。
   みすぼらしい格好の森 明(57)が、
   突然、真田の前に立ちはだかる。
   驚く真田。
   森、徐に真田にバナナを差し出す。
森「これ、やるよ」
真田「あ、いいですよ、別に、僕は…」
森「お前、ホームレスだろ。いつも炊き出しのところ来てんの、俺、知ってんだ」
真田「……」
   森、真田の手にバナナを握らせる。
森「お前のために貰って来たんだ。あの長い列、二回、並んだんだぞ」
   真田、うつむいたまま、バナナを高く掲げてお礼の合図。
   森、真田の背広の肩を叩いて立ち去る。

(続く)
(次回は、4月18日水曜日アップ予定です。お楽しみに。)

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