魅力ある男(3)
○丸山公園・花壇(夕)
花壇の花をいじっている背広姿の真田。
安永が近づいて来る。
安永「いつもすみませんねえ」
微笑む真田。
安永「あのね、真田さん、夜だけどね。あそこの公園の事務所、使っていいから」
真田「(驚いて)え?」
安永「あそこ、区のだから。許可だしとくから」
真田「僕は…」
安田「いいんだよ。何も言わなくていいんだ」
真田の肩に手を置いて立ち去る安永。
離れたところからそれを見ている舞子。
○公民館・中(夕)
安永が舞子に“花壇の世話”とある表紙のノートを見せている。
安永「だから、本当に僕は知らないんですよ。ほらね、ここにも住所は書いてないでしょ?会社名も書いてないでしょ」
安永、がっかりしている舞子を見て、
安永「彼はね、住所のない人ですよ、きっと」
舞子「住所のない人?」
安永「まあ、一言でいえば、ホームレスマン」
舞子「(驚いて)ホームレスマン?サラリーマンじゃないの?」
安永「何か世間の役に立ちたかったんでしょうねえ。花壇の世話申し出てくれましてね」
舞子、呆然としている。
○広場
炊き出しが行われている。
うろうろして列に加われない真田。
みすぼらしい格好の森 明(57)が、
突然、真田の前に立ちはだかる。
驚く真田。
森、徐に真田にバナナを差し出す。
森「これ、やるよ」
真田「あ、いいですよ、別に、僕は…」
森「お前、ホームレスだろ。いつも炊き出しのところ来てんの、俺、知ってんだ」
真田「……」
森、真田の手にバナナを握らせる。
森「お前のために貰って来たんだ。あの長い列、二回、並んだんだぞ」
真田、うつむいたまま、バナナを高く掲げてお礼の合図。
森、真田の背広の肩を叩いて立ち去る。
(続く)
(次回は、4月18日水曜日アップ予定です。お楽しみに。)
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